大谷だいやんのブログ

日記や様々な作品のレビューブログです。

『竜とそばかすの姫』感想~もし自分がすずの親父だったら、あの合唱団の奴らだけは絶対にゆるさん~

※ネタバレあり、1回しか観ていないので細かいとこ間違っていたらすみません。

細田守監督(監督・脚本・原作)の『竜とそばかすの姫』を観てきた。

率直にいうと、歌はめちゃくちゃ良い…絵もめちゃくちゃ良い…だが内容は微妙であった。

なぜ微妙な内容だと感じたのか簡単にいうと、まず仮想世界の設定がキツい、ストーリー終盤全世界での出来事から日本の虐待児へとスポットが当たり始めた尻すぼみ展開に興ざめし、最終的に「女子高生を東京の虐待親のとこまで1人で送り出した合唱団のおばさん達クズじゃね?」と大きなモヤつきを残し映画が終わってしまったからだ。

 

この作品がなんとなく世間の評判がイマイチであることは風の噂で伝わっていたが、私は思いっきり大衆受けしそうな内容より、中ヒット小ヒットくらいの作品が好きなので少し期待はしていた。確かに途中まではなんとなく良かったのである。とにかくベルのビジュアルも歌も曲も良いし、映像も良いし、オタクの友達は最高だ。

 

しかし、話が進むにつれ「<U>というこの仮想世界に皆何でログインしてんの?」という疑問が出てくる。まず、この世界の〈As〉というアバターだが、本人の生体情報を元にして自動生成されるのでそばかすなどの特徴が出たりするのだ。地獄かよ。

通常の仮想世界であると自分のアバターは自分で好きなように作れ、どんな外見にしようと自由であるし、だからこそ本来の外見に捕らわれずに魂が自由になれることが魅力の一つだと思う。なのに、この〈As〉には自分の身体的特徴が出るし(嫌すぎ)外見を選ぶこともできない、何でそんな中途半端な制約設けた?

そして主人公のベルはもちろん美しいし、竜も良い見た目をしているが、その他のキャラクターのほとんどが「THEモブキャラ」という感じの外見をしており、ケモノキャラは置いといて、多くが頭身の低い人間になれなかったようなアバターばかりという印象だ。どう考えてもベルの引き立て役でしかないような外見が自動生成され、<U>の世界へモブキャラとして毎日ログインをするというモチベーションが湧く人間がどこにいるのだろうか。。

 

そして、さぁここからどういう展開が待ち受けているのかというところで、後半からある虐待児達の話になっていくのだが、正直「そこにスポット当たるんかー、萎え……」という気持ちを抱いてしまった。

決してテーマが悪いわけじゃなく、モテモテの幼なじみとの恋愛話やら、父親との関係修復の話やら、ベルが天下取る話やらメインストーリーとして深く描けそうなところはいろいろあるのに、特に繋がりもないそこに話のクライマックスが進んでいくの?だったら忍達いる?という感じ。

またこの展開に興ざめしてしまった他の要素としては、「竜の正体が誰なのか」というくだりで、海外のアーティストや野球選手なのではないか?という疑いがあったものの結局竜も同じ国、日本の子供だった。という点だ。

この<U>の世界はもちろん日本だけでなく全世界の人が参加する世界で(世界が多い)、やたら多様な人種をこれでもかと描いているし、ベルのキャラデザが日本的でなくアナと雪の女王のエルサのようだし、<U>の世界はやたらディズニーチックであり、美女と野獣ぽいやろドヤっ!!ドヤっ!!(はいはいもうわかったよ、だから何なんだ)というシーンも出てくる。

少し話がそれたが、日本だけでなく世界でもヒットする作品作りをしているのはわかるが、全世界の人間がログインしている仮想世界で、一瞬で大人気になったベルは日本人だし、大暴れしてる竜も結局は日本人なんかーい。という急な尻すぼみ展開に興ざめしてしまったのだ。

面白いかどうかは置いといて、竜の正体が忍だったり、はたまた親父だったりしたら、まあまだ日本の中だけの話としても受け入れられるのだが、知らん子供達って……全世界へ開いた意味とは……と感じてしまった。

(そもそもベルは最初竜のこと知ってる風じゃなかったっけ?)

 

そして、どうしても私が一番モヤついて×2しかたがなかったラストの展開なのだが、すずが虐待される子達を助けに東京まで1人で旅立つのだ。。いやいや、合唱団のおばさん達は東京まで一緒に行かんのかい!結局他人事か!大人が5人もいながら虐待親のとこに女子高生1人で向かわせるて、、普通止めないか?せめて親父が帰るまで待たないか?

と突っ込む真面目な自分が出てきてなんだか現実に引き戻されたのだ。

もし自分がすずの親父であったなら、合唱団から経緯を聞いたら即、すずには現場へ向かうなと伝えて自分も東京へ向かうだろう。そして無事帰ってきたら、ずずを1人で送り出した合唱団の奴らをつぶす。

「虐待児の家の特定の仕方がご都合主義すぎる」「しのぶとカミシンとるかは家の特定をするためだけにこの映画に出たのか?」「48時間?映像があるのだから警察へ通報すればいいのでは?」「よくたまたま外に出てた虐待児をすずは見つけられたな『君の名は。』か?」「虐待親がジャスティンであったとしても女子高生にビビッて子供手放して逃げるか?」

といったツッコミどころがもはや気にならないほど、この合唱団の大人達のクズさばかりが気になり、その後のお話は全く集中できなくなってしまった。

 

あと、元々冴えない少女がネットの世界では大人気に……という話のような気がしたが、最終的に現実世界でも学校一番のモテイケメン、インターハイ体育会系陽キャ、学校のマドンナの陽キャ、金持ちオタク、という選ばれしスクールカーストトップの奴らと友達になってるし、なんだかなーと思う。というか元々歌が上手いのは事実なのだから、その時点でただの冴えない少女ではないよなー。。

 

……と酷評のような感想を書いてしまったが、絵は綺麗だし歌も曲も素晴らしい。とにかくその辺は「お金かかってんなー」と思うほどクオリティ高いので、ストーリーは置いといて映画館で観るべき、観て良かったアニメ作品だし、曲も後でちゃんと落ち着いて聴きたいと思った。